企画展
2025/11/14 – 2025/12/27
主催: ウトロ・アートフェスティバル2025実行委員会
本企画は、生まれ育った土地を離れて、京都・ウトロの地を新たな生活の場とし、コミュニティを形成してきた人びとの、移動と暮らしをめぐる闘いから着想を得ている。本展には、移動への新しい視線を拓くアート作品が集まる。これらは、今後も世界規模で続く人々の大移動を希望に満ちたものにしてくれるだろう。
地球という星には80億人が生きている。そのうち、もといた場所や「くに」を去り、他の土地で生きることを強いられた人の数は8,900万に及ぶ。この星の住人の89人に1人である。8,900万の内訳は、難民2,700万、難民申請者460万、国内避難民5,300万(UNHCR、2021〜2022年統計)。強いられた移動の原因は、戦争、内戦、自然災害のみならず、工場の爆発などの大事故、水源の化学汚染、さらには民族排斥などの悪政や、経済政策の破綻による窮乏化、苛烈なまでの南北経済格差などと、さまざまだ。
また、この統計からは、19世紀後半から現代に至るまで、明白な他律的移住以外にも、より良い生活を求める自律的移住も多いということがわかる。つまり「移動してそこに住む」ということが100年をはるかに超える期間にわたって、多くの人々の共通の経験となっているのである。
このような移動の経験は、移動した先での暮らしが出身地から引き離されてしまう「根こぎ」と、移動先で生まれた次世代の「根づき」との、ギャップを生み出す。そこには、新しいコミュニティへの道を拓く可能性と、それを阻む障害がある。すなわち、希望と苦しみの源なのである。
他律的移動と自律的移動にかかわらず、遠く離れた異文化を持つ土地へ移動し、そこで仲間をつくり、生活を築くという現象は、私たちの80億人の星をどのように変えてきたのだろうか。また、今後どのように変えていくのだろうか。本展覧会とフォーラムを通して、私たちはこれを問い、多くの議論を交わしたい。


■崔智睦<ウトロの井戸: 高き所から低き所へ>
仮設テント用布、アクリルラッカースプレー、紙、テープ | 可変インスタレーション(壁と床)
アーティストノート: 「ウトロの井戸:高き所から低き所へ』は、ウトロのコミュニティが長年にわたり直面してきた深刻な人権問題を、水というメタファーを通じて形象化した作品である。 ウトロの住民たちは、大雨が降るたびに繰り返される水害に苦しみ、日常生活の水すら地下水を汲み上げねばならない劣悪な衛生環境の中で暮らしてきた。 その後、日本市民社会の人権・生活改善運動によって上水道インフラが整備されたものの、直後に日産車体から土地を買収した西日本殖産が土地所有権を主張し、ウトロの人々は日本の司法制度のもとで「不法占拠者」という烙印を押されることとなった。 彼らにとって清らかな「水」は、生存の問題と、差別や抑圧の歴史を象徴している。 作品『ウトロの井戸」では、紙が水のように流動的に切られ、再び継ぎ合わされ、変化を重ねるプロセスが、テント布の上に形跡として残されている。 切り取られた断片は、井戸に満ちる水のように再び集まり、一つの形を成す。 この作品に適用された形式は、私の既存のテーマの一つである「内容としてのフレーム」だ。 画面を切り交差させて再構成する過程で、既存の形式は解体され、同時に完全に逆転した新しい規則と枠組みが生まれる。 これは単なる変形ではない。 内部と外部、覗き込むことと外を見るという視点を根本から転換させることで、再び新しいフレームを生み出すプロセスなのだ。 植民地時代の戦時動員による渡航、飛行場建設の過酷な労働、「飯場」と呼ばれる劣悪な居住地、日本軍国主義の象徴である旭日旗、嫌韓の声とともに焼失した村、在日コリアンのアイデンティティである朝鮮半島、「ウトロで生き、死ぬ」と叫んだ人々の粘り強い抵抗――。 これら全ての光景が布の上に痕跡を残し、波のように流れ、一つの井戸へと集まっていく。 その井戸は単なる取水場所ではない。 低い場所から命をつないできた人々の集合的な記憶であり、劣悪な環境の中でも血と汗で守り抜いてきた生存権の比喩なのだ。 紙は切り取られ、集められ、流れていく。 その流れは単なる形式的な操作ではなく、ウトロの人々が歩んだ歴史と抵抗の流れを視覚的に喚起する。 この問いは過去の出来事に留まらず、今を生きる私たちに向けられた有効な問いかけだ。 私たちは今、どのような既存のフレームの中で生きており、それにどう抵抗し、再構築していくことができるのだろうか。
■生命平和美術行動<咲け!タンポポ>
1000X600cm、民衆美術
の掛画(걸개그림)、2025
洪成潭、全情浩、洪成旻、朴成愚、朴泰奎、全惠玉
生命平和美術行動は、1980年の光州五月抗争の後に重要な役割を果たした韓国民衆美術運動の遺産を受け継いだ作品を制作した。民衆美術の掛画である<咲け!タンポポ>は、抑圧と差別に耐えながら、共に生き、支えあう道を模索する在日コリアンたちの闘いを描く。
美術手帖「30人が選ぶ2025年の展覧会90:山本浩貴(文化研究者)」
ウトロ・アートフェスティバル2025について山本浩貴さん執筆の記事が掲載されました。ご一読ください。 数多く開催された2025年の展覧会のなかから、30人のキュレーターや研究者、批評家らにそれぞれ「取り上げるべき」だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回は文化研究者・山本浩貴のテキストをお届けする。
週刊金曜日「ウトロ・アートフェスティバル2025」どのように「移住」し、 なぜ「そこで」表現するのか?(古川美佳)
『週刊金曜日』2025年11/14号(No.1545)に、先日京都で開催された「ウトロ・アートフェスティバル2025」についての記事が掲載されました 。ウトロの歴史や人々の営みを基軸に、ディアスポラや「排外主義」の風潮をアートで見つめ直すという、本フェスティバルの狙いが詳しく紹介されています 。 興味をお持ちの方は、記事を通じて、このフェスティバルが投げかける問いと、アーティストたちの表現に触れて…
ウトロ・アートフェスティバル 2025
ウトロ・アートフェスティバル2025は、「移動、暮らし、希望」をテーマに、生まれ育った土地を離れ、京都・ウトロの地を新たな生活の場とし、コミュニティを形成してきた人々の移動と暮らしをめぐる闘いから着想を得ています。本展は、移動への新しい視線を拓くアート作品を集め、今後も世界規模で続く人々の大移動を希望に満ちたものにすることを目指します。 フェスティバル概要 タイトル: 移動、暮らし、希望 期間: …
ウトロ・アートフェスティバル2025のウェブサイトが公開されました
ウトロ・アートフェスティバル2025のウェブサイトが公開されました。さまざまな催しが企画されています。ぜひご覧ください。 ウトロ・アートフェスティバル2025は、「移動、暮らし、希望」をテーマに、生まれ育った土地を離れ、京都・ウトロの地を新たな生活の場とし、コミュニティを形成してきた人々の移動と暮らしをめぐる闘いから着想を得ています。本展は、移動への新しい視線を拓くアート作品を集め、今後も世界規模…
